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吉村昭氏の著書を。

  • 2011/05/08

ある方にすすめられて、吉村昭氏の「三陸海岸大津波」を読みました。
原題は、「海の壁 三陸沿岸大津波」で、1970年の刊です。
明治29年、昭和8年と三陸を襲った大津波の際の状況が、当時の体験談をもとに詳しく記されています。
いずれも甚大な被害を東北の沿岸地方にもたらしました。人々が常に津波の恐怖と向き合い、そして少しずつ恐怖が薄らぎ、それを見透かすかのように自然が人々の暮らしを襲う…。
そのようなことが繰り返されてきたかのように思います。
明治の地震の際も、昭和の地震の際も、思っていた以上に救援・支援が迅速かつ手厚かったこともわかりました。この時代のも十分に参考になるものです。
いずれの津波の際も、かなり前から井戸の水が干上がる、異常な豊漁となるなどの前兆が伝えられており、今回の東日本大震災の場合にはどうであったのかも知りたいところです。
明らかなのは、今後も同様の津波がこの地域を襲うことは間違いのないこと。
まさに歴史が証明しています。
文中に引用されている地元の方の言葉が印象的であり、悲しく思います。
「津波は時世が変わってもなくならない、必ず今後も襲ってくる。しかし、今の人たちはいろいろな方法で十分警戒しているから、死ぬ人はめったにいないと思う。」
田老の防潮堤についても、避難道路の整備、防災訓練の実施などについても詳しく書かれ、津波被害を軽減させる人々の努力を伝えています。
しかし、現実はどうであったか、田老はどうであったか。
自然の計り知れない力を知るにつけ、いわれようのない無常感にとらわれたのも事実です。