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日本の人口の推移からこれからの課題を考える

  • 2013/05/27

日本の少子高齢化がよく話題になる。
今日は、日本の人口についておさらいをしつつ、皆さんとともに考えを深めてみたい。
まず、日本の長期にわたる過去の人口の推移をみてみよう。もちろん国勢調査が行われる以前は正確な数字を知るよしもないが、さまざまな研究によって大まかに推測されている。
1192年 鎌倉時代    680万人
1600年 関ヶ原の合戦 1200万人
1868年 明治維新   3300万人
2008年 平成   1億2808万人
短期間に大きく人口が増えたのは、享保の改革までの江戸時代前半と明治以降である。特に明治以降はおよそ150年で1億人近く増えたことになる。
人口の増減の理由はさまざまある。
戦争による減。食料やエネルギー源が限定されていた時代はことさらであった。
一般的に女性には生涯で8人から11人の子どもを出産する能力があると言われている。避妊の知識もなかった時代は、多くの子どもを出産したはずだが、医療が未発達で子どもの死亡も多かったはず。江戸時代まで人口が増えなかった最大の理由ではないか。平均寿命が短いことが理由と言いかえることもできる。
江戸時代になると、少しずつ生活水準も上がってくるが、ある程度の水準で人口の増加がおさまっている。何が人口の抑制につながったのかは諸説様々であるが、長男しか結婚を許されなかった時期があるとか、出産適齢期の女性が都市に奉公に出されることが多く出産時機を逸することが多かったなどの理由が挙げられている。多分事実だろう。
石炭などの新たなエネルギーが見出され、食糧事情も改善し、近代医療も少しずつ進歩しだした明治以降。世界大戦で尊い人命が多々奪われるという不幸があったものの、それ以外に人口を抑制する出来事もなく、また農村部では労働力供給という目的もあって、爆発的に人口が増えたのは前述の通り。
これがこれまでのおさらいである。
さて、それでは今後、人口はどのように推移していくのだろう。
政府が細かな試算をしているのでお示しをする。条件によって低中高3段階の試算をしているので、ここでは中位の数字をとりあげる。
2055年 9000万人
2105年 4500万人
2055年の9000万人は、1955年の8928万人とほぼ同じである。
昭和で言えば30年、もはや戦後ではないと言われた時期である。
2105年の4500万人は、1900年の水準とほぼ同じ。
つまり、映画のフィルムを逆回転させるように、人口の増減が逆戻りしていくのだ。  
このようになった原因はさまざまある。
しかし、そのきっかけを作ったのは日本政府であり、政策であったことはあまり知られていない。
少子化を推進してきたのは実は政府なのである。
1974年、中日ドラゴンズが巨人のV10を阻止し、長嶋茂雄が引退したあの年。僕自身は小学6年生であったが、そんなに昔のこととも思えない。
当時の人口は1億1000万人。なんと政府は少子化を促す大キャンペーンを行っている。「日本人口会議」なる会議が開かれ、「子どもは二人まで」の大会宣言を採択している。目の前の人口増加を日本の将来に影をさす大問題ととらえていたのだ。
この年2.14あった合計特殊出生率は翌年2.0を下回る水準となった。たった一年でである。これ以降出生率は減り続けていった。このときの目標は、2010年に約1億3000万人まで人口が増え、それ以降は減っていく状況をつくることであった。40年前に立てた目標がまさに実現しているのである。今の少子化は想定外のことではなく、想定通りのことが起きたにすぎない。
当時の政府が現在の少子高齢化とその課題を想定できなかったのは紛れもない事実。実にいい加減。つまりはそんなものなのだ。
最近の例だが、2010年、戸籍上は生きているはずの100歳以上の高齢者23万人を調査したら、実数は4万人。これをみてもいい加減なことがわかるだろう。
であれば、さきほどの予想できる未来も望ましい方向に変えられるのではないか。
50年後、100年後の未来は変えられる。少なくとも少子高齢化がそれほど問題でない時代はできうるのでないか。そんなに深刻にならなくてもよいのでないか。
これがプラス思考の僕の結論である。
まずは少子化の原因となっている、晩婚化、少産を改善する。
必要なことは簡単だ。
若い世代の子どもを持つことによる経済的な負担を軽減する。
主に女性の就労支援を徹底する。特に出産による離職リスクを減らす。
女性が働くと子どもを産まなくなるので問題だという方がいるが、認識違いもはなはだしい。女性の社会進出がすすめばすすむほど出生率が上がることは諸外国の例をみれば明らかだ。
厚労省の村木厚子女史の話によると、日本よりも女性の社会進出が進まず、日本以上に少子化に悩む国が先進国に3つある。イタリア、ギリシャ、スペインだ。いずれもユーロ危機の主役を務めた国々である。女性の活躍が国力の肝であることがおわかりいただけるだろう。
若い人たちが希望通り結婚をして、希望通りの子をもつと(希望しないのに結婚する必要もないし、子を持つ必要もない)出生率は1.75ほどに回復する。
50年後にも1億人を維持する水準だ。高齢化率も10ポイントほど想定より下がる。
政治は若者や子どもにもっと目を向けるべきだ。若い世代への支援が高齢者を支える国の基礎をつくることになるのである。
未来は政策によって変えることができる。必ずできる。
政治家として、このことを心したいと改めて思う。