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投票年齢の引き下げ。政治教育の今後について

  • 2015/05/19

現在20歳以上である選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が国会に提出されました。安全保障法制など他の法案との兼ね合いもありますが、今通常国会での成立の可能性が高くなっています。
選挙権年齢が18歳より下である国はどれくらいあるのだろうと調べると、実は90%以上。G7の中では日本だけが例外となっています。世界中で選挙権年齢が20歳以上などという国はほとんどないと言ってもいいくらいです。
僕もこの法改正には賛成です。しかし、日本においては様々な課題があることも事実。とりわけ教育における課題には大変大きなものがあります。18歳と言えば通常であれば高校3年生の年齢です。高校生に学校教育を通じて、選挙や政治をどのように教えるか。現場的にはなかなか難しいことです。
3つのキーワードを挙げます。「シティズンシップ」「政治的リテラシー」「教育基本法」の3つです。
まず、「シティズンシップ」。直訳すれば「市民性」ですね。「シティズン」の概念の由来は古代ギリシャまでさかのぼり、アテネなどの都市国家で直接民主主義の政治に参加する構成員をさすとされています。つまりは政治に主体的に参加する人、主権者をあらわす言葉です。政治との関わりを深め、政治や社会問題に関心をもち、社会の諸活動に参加し、そうした経験を通じて、政治的・社会的課題に対して的確に意思表示や判断ができる力。こうした力をどう育てるか。
この政治的・社会的課題に対して的確に意思表示や判断ができる力、これを「政治的リテラシー」と言ってよいと思います。情報を収集し、読み解き、考察し、判断する、そのためには何よりも政治的事象に対して興味関心をもつことが大切です。興味関心をもつだけではだめで、判断に至る過程を訓練することも必要です。
そして、こうした政治的リテラシーを身につけさせるための場のひとつが学校教育です。しかし、これまで学校教育はこの政治的リテラシーを身につけさせるための教育、「主権者教育」、「政治教育」から距離を置いてきました。それが若者の政治離れにつながっていることは紛れもない事実です。先日もある高校を訪問し、子どもたちと直接話す機会がありましたが、残念ながら多くの子どもたちから政治的な興味などは感じることができず、投票権をもった主権者としての彼らがイメージできませんでした。
直近の衆院選挙での年代別投票率をみてみましょう。最も高いのが60歳代68.28%。次が50歳代の60.07%、続いて70歳代の59.46%、最も低いのが20歳代の32.58%となっています。この傾向はここ数年固定化されていて、このままでは新たに選挙権を得る10歳代の投票率は20歳代をさらに下回ることさえ予想されます。
では学校教育で主権者教育の推進を妨げてきたものは何であったのでしょう。ここで3つめのキーワード「教育基本法」の登場となります。教育基本法は第14条において政治教育の必要性を明確に謳っています。
※第14条 「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。」
そしてその2項ではこのように規定されています。
※第14条2 「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」
かつて教職員組合と文部省、政府与党が教育政策を巡り対立関係にあるなか、教職員が一部の政党を支援し、教育を通じてその支援を拡大するのではないかと論じられた時代がありました。学校教育への統制が強化された理由のひとつでもあったのでしょう。
教師たちはそのような政治的な背景の中で、この教育基本法14条をどのようにとらえたのでしょうか。第2項の「政治教育その他政治的活動をしてはならない。」この部分のみを大きく解釈し、学校におけるすべての政治教育・政治的活動がタブーとされたのではないでしょうか。第14条をもう一度じっくり読めば、明らかですが、第2項の規定は本来そのように解釈するものではありません。あくまでも前提に「特定の政党の支持や反対」があり、そのための政治的教育や活動が制限されているのです。
この現場での解釈により、学校では政治はタブー視されました。学校に政治家がやってきて意見を述べる、生徒が特定の政党やその政策について評価する…こうした授業はあまり行われず、憲法に基づくわが国政治のしくみについて教科書などを使って淡々と教えることも多かったのではないかと思います。
確かに教育の政治的中立は大切です。学校教育が特定の政党や政治家の主張に偏ったら大変なことになります。中立とは真ん中に立つことで、距離を置くことではありません。ヨーロッパなどでは授業に政治家を呼んで政策などを聞くような場合があります。しかし中立性を担保するために原則すべての政党から話を聞くこととしているようです。中学・高校、国によっては小学校から徹底的に政治的な教育を行います。政治的リテラシーの育成こそが国の根幹だと認識しているからこそだと思います。
日本の政治教育も選挙年齢の引き下げを機に大きく改善すべきです。若者が主体的に政治に参加するようになれば、政治の目線も高齢者中心の現在から、若者や子育て世代を含めたバランスのよいものに変わるでしょう。
今、党内で主権者教育ワーキングチームを作り、事務局長として活動しています。できるだけ早期に議論のまとめを出したいと思っています。出来次第、またお知らせしたいと思います。