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名ばかり「大学無償化法」がなぜダメなのか?

  • 2019/05/14

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この法案は問題点が山積していて、現段階で成立させることは問題だと言い続けてきました。どんな問題点があるのか、いくつか挙げて説明します。

・消費増税が延期になったらどうするの?
 来年4月からの実施なのに、法律では消費増税が行われた年の翌年の4月1日までに施行することになっています。つまりは消費増税が何らかの理由で行われなかったらこの制度も実施されないこととなります。消費増税があってもなくても実施するのかどうか、ここを何度問うても政府からは明確な答えはありません。

・必要経費の7600億円、本当に必要なの?
 支援対象者は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生です。この世帯の学生の大学等への進学率は現在40パーセント。これがこの措置によって80パーセントに上がることを想定していますが、授業料と奨学金の支援でそこまで上がる?根拠がない。多分上がりません。

・今現在の授業料減免措置がなくなるかもしれない?
 今回の無償化の対象は年収380万円までの世帯。ところがそれ以上の世帯でも多くがすでに授業料減免を受けています。大学生の家庭の年収は400万円から600万円が約6割。これらの学生が受けている制度の継続について、政府は全く約束をしていません。今回の措置によってなくなる可能性もあるとの説明もあります。

・通う大学によって支援対象かどうかが決まる?
 授業料の補助も奨学金給付も、通っている学校が確認大学にならなければ学生たちは支援を受けることができません。通う学校が文科省のお眼鏡にかなう学校でなければ学生たちが支援を受けられない。すでに進学している学生たちも同様です。おかしいですよね。

・かなり厳しい支援打ち切りの条件があり、中退者を増やしかねない?
 アバウトに支援を受ける学生はそれぞれの学部で生成が上位4分の3に入っていないと支援打ち切りの可能性があります。授業料などの返還もあり得ます。在学中に突然支援を打ち切られたらそれは即刻退学を意味します。

・なぜ2浪まで?
 支援を受ける学生は2浪までの学生で、3浪以上は対象となりません。大学入学への道筋は人それぞれなのに。2浪までの学生に支援を限る明確な理由はありません。

・授業料そのものが高くなるのでは?
 授業料減免に予算を投じることも重要ですが、根本的には授業料そのものを減額する方策を講じるべきです。国立大学の授業料の標準額は53万5400円ですが、+20パーセントの範囲内で各大学が自由に設定できるシステムです。実は今年から複数の大学が10万円ほどの大幅な値上げに踏み切りました。中間所得層にとっては大問題です。

・これまでの貸与型奨学金の改善がまったくなされていない?
 今回の奨学金給付は世帯年収380万円程度までの世帯のみが対象で、貸与型奨学金利用者の多くや返済中の者への支援とはなっていません。返還猶予期間の延長、延滞金賦課率の引き下げなどの対策を打つべきです。また有利子奨学金の無利子への転換なども盛り込まれていません。

このように「大学の無償化」というには看板倒れ。ここに7000億円を超える巨額の予算を費やしたら、これ以降、大学の無償化の進展が図られない可能性があるのではと危惧します。
少子化対策とも政府は言います。この制度導入で少子化に歯止めがかかりますか?子どもをつくるかどうか迷うカップルが、「非課税世帯は大学授業料が無料だし、奨学金もたくさんもらえるから、子どもをもうけよう」となりますか?生まれてくる子どもが大学に進学するのは20年ほども先の話ですよ。20年後に自分の家庭が低所得世帯だなんて想定する男女がありますか?それよりも大学の授業料が全体として安くなった、奨学金が給付型になったなどの所得によらない恩恵があることが大切なのではないでしょうか。

7600億円の財源があれば、「現行の大学授業料減免の規模を3倍に」「貸与型奨学金の半分を給付型に」「貸与奨学金の有利子をすべて無利子に」これだけのことができます。これなら少子化対策にもつながるのでないでしょうか。