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文科省概算要求 教職員定数増を読み解く。

  • 2019/09/27

今回の要求は4235人の定数増だ。全国3万校の公立小中学校に対して4000人あまりの定数増ということで、平均すれば7から8校に一人の配置増となる。それはそれで大きな数字だが、実はそこまでに大きな配置増とはならない。

小学校の英語専科教員の充実1000人、高学年の教科担任制の支援2090人、中学校の生徒指導強化670人、こうしたメニューを合わせて3920人。

これに17年に基礎定数化した通級や外国人児童生徒への日本語指導などに315人。

合わせて4235人の増員となっている。

先生の定数が4235人増えるのは事実だが、来年度全国に配置される先生の数は予算上は14人減ることになる。

なぜこのようなことが起きるのか。理由は大きく言ってふたつある。

ひとつ目の理由は、増減の基準となる教職員定数が全国の学校の学級数などを基に算定されていることにある。つまり少子化によって子どもの数が減り、学校が統廃合され、学級の数も減り続けている今、この教職員定数そのものが減少しているのだ。来年度はこうした定数の自然減が2249人と見込まれている。

ふたつめの理由は、今回の要求には定数増だけでなく定数減も盛り込まれていることにある。4235人増やすのは事実だが、これまで配置されていたティーム・ティーチングなどの加配が見直され、2000人分が減らされる。このTT加配はひとつの学習集団を細かく二つに分けたり、二人の教員で指導したりする際に活用される。きめ細かな学習成果が見込まれる反面、一人の教員の負担が極端に減るわけではない。持ちコマ数も変わらないケースがほとんどだ。働き方改革が叫ばれ、教職員の負担減が大命題となっている今、このTTに充てていた教職員数を専科指導などに配当し直すということだろう。これが2000人というわけだ。これもひとつの知恵か。学習効果なども検討する必要はあるだろう。

つまり、定数増は4235人から、自然減2249人と配置見直し2000人の計4249人。これを減じればマイナス14人となる。つまり定数増による国の新たな負担は実質生じない。

要求そのものがマイナス予算なのだ。それでも安倍政権下では高水準の定数増要求だ。防衛費等が青天井に増え続け、対米政策にも惜しげもなく予算が投じられるなか、教育予算のこのせこさ。教育や子ども政策に対する政権の優先順位の低さがおわかりいただけるだろう。文部科学省や自民党文教族と言われるみなさんも、財務省や官邸の顔色を伺うだけでなく、もう少し骨を見せられないかと正直思う。この要求とて予算編成でどうなるかわからない。この要求が通らないようでは話にならない。