難しい話をわかりやすく伝えたい
- 2017/02/09
議員はとにかく人前で話をする機会が多い。議会での質問や諸会議での発言もそうだが、有権者に自らの政策などの重要性を伝えることも大切な職務である。
しかし、実際は難しい言葉の連続で成り立っている政策などをわかりやすく伝えることは難しい。それを何とか伝え切りたいと思うから、説明が細かくなり、話が長くなり、聞く側も聞けば聞くほど話が分からなくなるという状況に陥る。こんなことがしばしば起きる。一人の政治家としてこれだけは何としても避けたいが、これがまた難しい。
日本語研究の第一人者であった金田一春彦先生が「美しい日本語」という著書の中で、渋沢秀雄氏から聞いた話としてこんなことを記している。
渋沢氏が外国人の友人を連れて歌舞伎の勧進帳を観に行った。外国人は、あれは何者だ、手に持っているものは何だ、といちいち尋ねてくる。山伏と言っても通じない、ましてや勧進帳なども説明しづらい。そこで渋沢氏は「これは昔パスポートなしで税関を通り抜けようとしている話だ」といったところ、外国人は「オー・アイ・シー」とにっこり笑い、以後は一切質問しなかった…
通常なら義経が兄の頼朝に追われて…、家来の弁慶は…などと説明したがるところだが、その説明では意味はほとんど通じなかっただろう。金田一先生は、この本の中で物事を説明するコツとして、相手の知識を活用する、相手の知っている他のものに結びつける、あまり多く一度に言わない、などを挙げている。
なるほど。当たり前といえば当たり前だ。自分が知っていることを相手が知っているとは限らない。相手が想像できない事柄をいくら細かく説明してもムダだ。わかりやすく身近な事例に例えて話すのが一番効果的だ。政治家だけでなく商売人や教師などにも参考になるのでないか。問題は瞬時にそれが思いつく頭の瞬発力があるかどうか、そのためのトレーニングを重ねているかどうかにもよるのだろう。