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加計学園問題について

  • 2017/06/02

3月のTV入り決算委員会。まだ世にほとんど知られていなかった加計学園岡山理科大学獣医学部新設について安倍総理に質問した。国家戦略特区のスキームを利用しての新設だが、決定までの経緯が不透明で、これまでの方針や状況を踏まえれば理解不能。加計学園の理事長が総理の親友だと聞き及ぶに至っては、何らかの見えざる力が働いたのではないかと考えるのが普通だ。

私がまず質したのは、なぜ加計学園が選ばれ、同様に新設を希望していた京都産業大学がはじかれたのかという点だ。京都産業大学の計画より加計学園の計画の熟度が高いなど山本担当大臣から答弁があったが、提案の内容をみると素人目にも明らかに京都産業大学の提案の方が質が高い。提案内容の厚みにも格段の差がある。大臣の答弁はしどろもどろで明確な回答はなかった。

総理と理事長との個人的な関係が特区の認定に影響を与えたのではないかという指摘もさせていただいた。いろをなして反論する総理の姿が印象的だった。今回の獣医学部新設にあたり、開設される地元今治市は36億円もの土地を無償で学園に譲り渡している。このことに関して、特に質問をしていないのに、「過去20年間で25件、自治体による学校法人への土地の無償譲渡がなされている。決して珍しいことではない」と総理から発言があった。ちなみに申し上げれば、過去20年間で25件は事実だが、すべての案件が10年以上昔の話。つまり、この10年間に限れば初のケースだ。それを20年で25件などと説明する。とんでもない答弁だ。国民を馬鹿にしすぎだ。

いいか悪いかは別にして大学の設置基準により、そもそも獣医学部の新設は認められていない。だから特区制度を利用しての特例でという話になる。それでもこの獣医学部の新設の検討にあたっては2015年6月に以下の4つの条件が付された。つまりこの4条件をクリアしていないといくら特区でも検討もされませんよとなったわけだ。

  1. 既存のものとは違う構想
  2. 新たな対応すべき分野と具体的な需要
  3. 既存の獣医学部では対応困難
  4. 獣医師の全国的な需要を考慮

この4条件についてもクリアしているとはいいがたい。いくつかその事例を挙げよう。

②について加計学園は、地域での感染症にかかわる水際対策を挙げている。政府答弁でも鳥インフルに対する対応の必要性が示された。しかし、四国ではここ数年鳥インフルは一件も発生していない。とりわけ瀬戸内海に面した愛媛や広島ではこれまでも発生が確認されたことはない。地域的に具体的な需要があるとは現段階では考えられないのだ。

④の獣医師の全国的な需要についても大きな疑問がある。かつて農水省が試算した2050年にむけての産業職業獣医師の需給状況を見ると、地域的に最も獣医師が不足するとされているのは東海地域、次が九州地域だ。しかし、現在、東海地域には獣医学部は岐阜大学に30人の定員があるのみ。九州は鹿児島大学と宮崎大学にそれぞれ30人、計60人の定員があるのみだ。そこに突然160人定員の日本一の巨大な獣医学部が四国に誕生する。これでは地域の偏在という観点からも合点がいかないのは当然だろう。

ことの真相は分からない。総理がどのようにこの案件に関わったのかは不明だ。例によって例のごとく森友同様、解明に必要な資料も開示されない。集中審議も前川喜平前事務次官の参考人招致も私が筆頭理事を務める文教科学委員会では与党から拒否をされている。

多くの国民がおかしいと思っている。しかし、国民の疑惑に答えようとせず、しらを切り通したままことの収束を待つ。これが自民党の姿勢だ。

ちなみに、前川喜平前文部科学事務次官について一言申し上げたい。私の前川氏に対する印象を申し上げれば、フレンドリーで表裏なく人と接する、教育に対する情熱は熱く、現場主義、そうした方だと思っている。退官後も貧困家庭の子どもたち相手に勉強を教えるボランティアをしていたと聞いている。自らの経歴を周りに知らせず、無報酬での活動だ。夜間中学校に対する法整備の際も現場に幾度か足を運んで声を直接聞いていた。そんな事務次官経験者がどこにいるか。前川氏の義憤に応えるためにも、この問題をうやむやのまま終わらせるわけにはいかない。