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5月22日中教審諮問について思うこと

  • 2023/05/22

「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策についてとの内容で、文部科学大臣による中央教育審議会への諮問がなされた。
 内容は大きく3点。「更なる学校における働き方改革の在り方」、「教員の処遇改善の在り方」、「学校の指導・運営体制の充実の在り方」についてだ。

 働き方改革については、「更なる」との一言がなかなか微妙で、これまでの省としての取組や思いの大きさも感じるが、新たな視点は従来と比較してほとんどない。教師の業務の3分類を更に検討するよう求めているが、従前の3分類が役立っていないのに更に検討してどうするのか。必要なのは分類できない理由の分析だ。
 また、上限指針を実効性あるものにするための仕組みの検討についても、在校等時間の上限が法的に指針に格上げされたにもかかわらず、守られていない違法状況を前提としているように聞こえる。求められているのは、実効性ではなく実行するための仕組みづくり、具体策だ。
 各教育委員会における働き方改革の取組状況等を見える化する枠組みについては、新たな教委や学校への業務負担を強いることにならないか心配である。内容によっては必要ないのではないか。

 教師の処遇改善については、一律4%が支給されている教職調整額の在り方を検討事項にあげながら、次項目で教員の職務の特殊性にあえて言及、教育が教師の自発性、創造性に基づく勤務に期待する面が多いと、現行給特法の理念に近い視点を示している。時間外勤務手当の支給に関しては、あくまでも現在の学校現場の状況や県費負担教職員制度等を踏まえるとあり、何だかすでに給特法の根本的な見直しに否定的な雰囲気も漂う。
 給与制度や教師の職務等に応じた給与のメリハリも検討事項にあげているが、処遇の改善につながる事項なのかそうでないのかよくわからない。給与にメリハリなど考え方によっては一部処遇改悪につながりかねない危惧の念をもってしまう。

 学校の指導・運営体制の充実については、前向きな検討を望みたい内容が多い。柔軟な学級編制や教職員配置の在り方、子供や学校、地域の実情に応じた柔軟な教育活動の実施などは、私が従前から求め続けてきた内容と重ねる部分も多い。要は現場主体で、学級編制や教職員の配置、教育課程の編成が一律でなく可能となるような制度変更だ。
中学校の35人学級も定数上の措置としては進め、実際の運用は学校ごとの判断に預ける視点も必要だろう。年間35週の実施を前提に組まれている時間割についても、現に大幅に各教科の授業時数を超過している実態に即して、週の授業コマ数の減につながるような工夫を促すことも検討すべきだ。
 小学校の教科担任制も働き方改革のために更なる工夫や進捗が望まれる観点として重要だ。

 最後に、働き方改革、教員不足などの課題解決のために最も必要な視点は2つだ。1つは教職員定数増。即効性が高く、費用対効果も高く、現場からの期待も大きな施策である。もう1点は総人件費の増だ。処遇改善の手法は様々あるが、現在のパイの配分を変更するだけでは意味がないし、何一つ改善につながらない。総額としてどれだけ、教職員の働きに見合う人件費を想定するのか、そうした観点が具体的に諮問に盛り込まれなかったことは残念だが、議論を深めることは可能のはずだ。

 中教審の関係者には、現場目線での結論ありきではない具体的で闊達な議論を望みたい。期待するところ大だ。