メルマガ第1号を発刊します。
- 2013/03/22
メールマガジンを発刊することにしました。
名刺の交換などでアドレスをいただいている皆さんにお送りをしたいと思っています。
今回の第1号をアップします。2号以降についてメールアドレスに配信を希望される方はご連絡ください。
すべて斎藤による生原稿です。マガジン名は「元先生のセンセイ日記」としました。
斎藤嘉隆参議院議員メルマガ 「元先生のセンセイ日記」1号
「教育の改革は、深く考え、広く見渡し、慎重に進むべきもの 高校無償化について」
安倍政権は教育改革にご執心のようだ。教育が我が国の最重要課題であるという認識は共有できる。しかし、その方向性は曖昧で危うく、広い視点から中身を吟味したとは言いがたい。今回はそのうちのひとつ高校無償化の見直しについて考えを述べたい。
民主党政権の主要政策のひとつであった「高校無償化」。自民党政権は野党時代から徹底してバラマキだとの批判を繰り返してきた。
安倍政権は、制度そのものは維持するとしながらも、所得制限を導入する方向を示している。要するに一定以上の所得のある家庭の子どもまで高校授業料を無償にすることは、バラマキであって、税金のムダ遣いであるとの指摘だ。
この指摘は実は全くの事実誤認だ。バラマキを叫ぶ与党議員の皆さんが本当に制度の全体像を理解して言われているのか疑問である。
実は高校無償化についてはすでに所得の多寡による差がつけられている。僕たちはこの制度導入時に、無償化とセットで特定扶養控除を縮減するという措置をとらせていただいた。財源の確保という目的があったのも事実だが、それ以上に低所得世帯には高校無償化の恩恵がストレートに及び、高所得世帯にはその恩恵が少なくなるように配慮したシステムだ。
一例を挙げる。父がサラリーマン、母が主婦、高校生の子ども一人の家庭の場合である。ちなみに、公立高校無償化による授業料分の便益はすべての家庭で11.8万円である。この家庭の年収が400万円だったと仮定した場合、特定扶養控除の縮減によって2.45万円の負担が生じるため、実質的なプラスは、11.8万円-2.45万円で9.43万円となっている。年収800万円だとすると、特定扶養控除縮減分が6.2万円であるので、実質11.8万円-6.2万円で5.68万円のプラス。年収1400万円を超えるような高所得世帯は、特定扶養控除の縮減分がほぼ無償化分と相殺されるため、実質的なプラス分はほとんどない。
つまり、現行の高校無償化はすでに所得による傾斜的な配分となるよう制度設計がなされている。仮に自民党のいうように年収700万円以上を所得制限の対象とし、高校無償化の適用外とすると、特定扶養控除縮減による負担増だけが残ることになる。
他にも様々な課題が生じる。そもそも基準となる年収とはいつの年収をいうのか。通常は前年の所得をいうのであろうが、前年の所得が市町村民税の課税により把握できるのは翌年の7月だ。となれば、2013年の所得が2014年に7月に分かり、2015年の授業料を徴収するかどうかが決まるということか。高校時代は3年しかない。また、解雇などの保護者の急な所得変動に対応できるのか、疑問だ。
さらに、この所得は世帯全体の所得とするのか、699万円は無償で700万円は有償、これで本当によいのか、学校での事務負担増にどう対応するのか、私立高校の支援金はどうするのか、こうした課題があることを認識した上で打ち出した政策とはとても思えない。つまりは現場のことがよくわかっていないのだ。
公立高校の無償化は、先進国の中ではスタンダードな政策である。欧米の多くでは100年以上も前から行われてきた。アメリカの一部の州では南北戦争前から高校は無償なのだ。日本と韓国だけが公立高校生から授業料を徴収し続けてきた。日本が無償化に踏み出し、韓国も新政権の元で無償化を進めていく方針と聞く。これが世界の潮流であり、逆行は許されない。
我が国において、高校生や大学生の子を持つ世帯の教育費負担は大きすぎる。この世代の子を持つ家庭の多くは、貯蓄を切り崩す赤字家庭となる場合が多い。そのため、進学をあきらめる子どもは後を絶たない。学生ローンとみまごうばかりの奨学金の返済に悩む若者も多い。なぜこんなに若い世代に冷たいのだろうか。今こそ未来の人材への投資を拡充すべきでないのか。
安倍政権は幼児教育の無償化を公約に掲げていた。(幼児教育の無償化は小泉政権時代から公約に掲げているのだが…)僕自身も幼児教育の無償化に大賛成である。しかし、高校無償化には所得制限を施すとしながら、幼児教育無償化には所得制限をかけない方針と聞く。この矛盾を問われた委員会質疑に対する答弁で大臣は「幼い子どもをもつ世帯は収入が少なく生活が苦しいから…」というような認識を示した。おおざっぱに言えばそれは間違いではない。しかし、高校生以上の子を持つ世帯は圧倒的に支出が大きく、むしろ苦しさが大きいのだ。ましてや昔のように賃金が年齢によってアップする状況がないなかで、その苦しさは大きくなっている。さまざまな調査結果がそれを物語っている。認識が甘いといわざるを得ない。党利党是が国民の生活実態より先んじてないか。
ひとつひとつの政策を吟味し、真に国民のために資するよう、党派を超えて中身のある議論をしていきたいと思っている。与党の皆さんにも理解いただけるはずだ。