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ゆとり世代に期待する。

  • 2016/05/17

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ここへきて、また「ゆとり教育」「ゆとり世代」などと言う言葉が盛んに言われるようになった。「ゆとりですがなにか」というタイトルのドラマが放映されて人気のようだ。

なぜか今になって、文科大臣が「ゆとり教育に決別を宣言」したらしい。現在文科省は「アクティブ・ラーニング」なる学習の重要性を盛んに説いている。次の学習指導要領編成の基本的な方針だ。このアクティブ・ラーニングで目指す主体的な学習が、ゆとり教育で目指したものと重なる部分が大きいため、その違いを強調したかったんだろう。正直な感想を述べればただただ滑稽だ。

誇張して伝えられる「ゆとり教育」を受けてきた世代とは誰たちを言うのだろう。そもそもゆとりある教育の重要性が叫ばれ、そのもとで作られた学習指導要領は小学校の場合1980年にスタートする。このときに小学校1年生だった子どもたちは現在の40半ばだ。ゆとり教育を受けてきたはしりは今の30代から40代が中心だ。しかし、この世代がさらに卑下するように「ゆとり世代」というのであるから、一般的にはもう少し若い世代をゆとり世代というらしい。

学習内容が3割削減されて、円周率が3.14から3になり、順位を付けることがだめになったなどとおもしろおかしく伝えられる指導要領は2002年(小学校)スタートで2010年まで続けられた。この時期に義務教育を履修した世代をゆとり世代というのであれば、現在の20歳前後か。まさにこれから多くが社会に出る世代だ。ちなみのこのころ私は小学校で教鞭を執っていたが、円周率を3で計算させたことなど一度もない。運動会の徒競走で手をつないで同時にゴールさせたことなどもまったくない。

彼らが受けてきた教育はそんなにひどい教育であったのか。ゆとり教育を批判する世代はこの世代より学力や人間性が上なのであろうか。素朴な疑問だ。その答えはまだ誰にも分からないと思う。だって彼らが社会で活躍するのはこれからなのだから。

元教師であった自分が自分の教え子でもあるいわゆるゆとり世代をみると、正直なかなかイケていると思う。プレゼンさせれば他の世代を圧倒するし、何よりもボランティア精神に富んでいる。学力だって、少なくとも40代や50代の皆さんよりは受けてきた学習内容や授業の質が高いと思う。教師の指導法やスキルもアップしているからだ。また、他人のために喜び、悲しむ感情の豊かさも目立つ。

私はゆとり世代に大いに期待している。ゆとり世代という言葉自体が大嫌いだがこの世代は頼もしい。これも多分に主観的な見方なのかもしれないが…。

繰り返しになるが、ゆとり世代の評価はこれからだ。これだけ世の中でPDCAサイクルだの何だのと言われるにもかかわらず、教育の世界だけはそれが重要視されないようだ。きちんとした評価もされないまま、次へのスタートが切られる。即時に成果が現れない教育であるからこそ、慎重に慎重に一歩ずつ改革をすすめていかなければならないのに政策は矢継ぎ早。評価もへったくれもない。まったく真逆だ。

10年もたったら、いわゆる「ゆとり教育」が改めて評価される時期が来るのではないか。教育政策には太い芯が欲しいと思う。これまでの政策や研究の積み重ねで培った太い柱だ。そしてその経験の積み重ねは文科省や政治家にはなく現場の子どもたちの本当の姿にある。子どもたちの子ども時代・学びの時代は一度きりだ。世の風潮や、一部の政治家の思い込み・政治的な姿勢でふらふらするようなものであっては困る。